なかの@投資大好き
10年以上の投資経験を持つ個人投資家。日本株、米国株、韓国株、ETF、投資信託などを経験。普段はサラリーマン。
ASEAN各国でデータセンター投資が一気に加速している背景
ここ1〜2年、ASEAN地域でのデータセンター投資が驚くほどのペースで伸びている。シンガポールはもちろん、マレーシア、タイ、インドネシアといった国々が次々と大型案件を発表している状況だ。
背景にあるのは明確で、AI需要の爆発的な拡大とクラウドサービスの普及だ。ChatGPTをはじめとする生成AIが一般化し、企業のデジタル化も加速する中で、データを処理・保管するための施設が圧倒的に不足している。特にASEAN地域は人口が6億人を超え、デジタル経済の成長率も年率10%超と高い。この地域でのデータセンター需要は2025年から2030年にかけて年率15〜20%で成長するという予測もある。
さらに重要なのが、各国政府が積極的にデータセンター誘致を進めている点だ。マレーシアは2024年に入ってから複数の外資系ハイパースケーラー(Google、Microsoft、AWSなど)の投資を受け入れ、税制優遇も拡充。タイも東部経済回廊(EEC)エリアでのデータセンター建設を後押ししている。インドネシアも「データ主権」を掲げつつ、国内にデータセンターを誘致する政策を強化中だ。
電力供給や冷却技術、通信インフラなど、データセンターには多くの周辺産業が絡む。つまり投資対象としても裾野が広く、複数の切り口で銘柄を選べるのが面白いところだ。
今買うなら押さえておきたいASEANデータセンター関連銘柄
具体的な銘柄を見ていこう。ASEANのデータセンター関連銘柄は、大きく分けて3つのカテゴリーに分類できる。
データセンター運営企業
まず最もわかりやすいのが、データセンターを直接運営している企業だ。ST Telemedia Global Data Centres(STT GDC)はシンガポールを拠点に、ASEAN全域でデータセンターを展開している。非上場だが、同社の親会社であるシンガポールテレコム(Singtel)は上場しており、間接的な投資対象になる。
タイではGulf Energy Development(GULF)が注目だ。もともと発電事業が主力だが、データセンター事業に本格参入し、2024年には大型施設の稼働を開始している。電力とデータセンターの両方を手がけることで、電力調達コストを抑えられるのが強みだ。株価も2023年から約30%上昇しており、勢いがある。
マレーシアではYTL Power Internationalが面白い。同社もエネルギー企業だが、通信インフラとデータセンター事業を拡大中。マレーシア政府の誘致政策とも合致しており、今後の受注拡大が期待できる。
通信インフラ・ネットワーク企業
データセンターは通信ネットワークとセットで機能する。ここで注目したいのがAxiata Group(マレーシア)とAdvanced Info Service(AIS、タイ)だ。両社とも通信キャリアだが、データセンターやクラウドサービスへの投資を強化している。特にAISはタイ国内でのデータセンター需要を取り込むため、設備投資を加速させている。
電力・冷却システム関連
データセンターは膨大な電力を消費し、冷却システムも必須だ。ここではGamuda(マレーシア)のようなインフラ建設企業や、電力供給を担うPTT(タイ)も視野に入る。直接的なデータセンター銘柄ではないが、インフラ需要全体の恩恵を受けやすい。
個人的には、電力とデータセンターの両方を手がけるGulf Energyと、通信とデータセンターを組み合わせたAISが、今の局面では最も投資妙味があると見ている。理由は後述する。
このテーマで見落としやすいリスクは政治と電力供給だ
ASEAN地域のデータセンター投資には、いくつか見落としやすいリスクがある。特に重要なのが政治・規制リスクと電力供給の不安定さだ。
データ主権と規制強化
インドネシアやベトナムは「データ主権」を強く主張しており、国内で生成されたデータは国内で保管することを義務付ける方向に動いている。これは外資系企業にとってはコスト増要因であり、規制が突然強化されるリスクもある。マレーシアやタイは比較的オープンだが、政権交代や政治的混乱があると方針が変わる可能性もゼロではない。
電力供給の問題
データセンターは24時間365日、安定した電力供給が必須だ。しかしASEAN諸国の中には、電力インフラが十分に整備されていない地域もある。特にインドネシアやフィリピンでは停電リスクがあり、データセンター事業者にとっては致命的だ。
タイやマレーシアは比較的安定しているが、それでも再生可能エネルギーへの移行が進む中で、電力コストの上昇は避けられない。Gulf Energyのように自社で発電設備を持つ企業は有利だが、そうでない企業は電力調達コストの上昇が利益を圧迫する可能性がある。
為替リスクと資金調達コスト
ASEAN通貨は対ドルで変動が大きい。データセンター建設には巨額の設備投資が必要で、多くの企業がドル建てで資金調達している。米国の金利が高止まりする中、借入コストが上昇し、収益を圧迫するリスクは常にある。タイバーツやマレーシアリンギットが急落すれば、ドル建て負債の負担が一気に重くなる。
これらのリスクを踏まえると、現地通貨建てで投資し、為替ヘッジをかけるか、あるいは電力・通信・データセンターを垂直統合している企業を選ぶのが賢明だ。
投資判断は「選択的な買い」で、銘柄の絞り込みが重要
結論として、ASEANのデータセンター関連銘柄は「選択的な買い」が妥当だと考える。ただし、どの銘柄でも良いわけではなく、事業の垂直統合度と政府との関係性、電力調達の安定性を基準に絞り込むべきだ。
具体的には、タイのGulf Energy Developmentが最も投資しやすい。理由は明確で、発電とデータセンターを両方手がけることで電力コストを抑えられる点、タイ政府のEEC政策とも合致している点、そして2024年に入ってから実際に大型案件が稼働し始めている点だ。PER(株価収益率)も15倍前後と割高ではなく、配当利回りも3%台と悪くない。
次に注目したいのがタイのAdvanced Info Service(AIS)だ。通信事業が安定収益源となっており、データセンター事業への投資も加速している。タイ国内でのデータ需要を取り込む体制が整っており、中長期で成長が期待できる。ただし、通信事業の競争が激しいため、短期的な株価上昇は限定的かもしれない。
マレーシアのYTL Power Internationalも面白いが、こちらは事業の多角化が進みすぎており、データセンター事業の貢献度がまだ不透明だ。2025年後半以降、具体的な受注が増えてから検討しても遅くないだろう。
今後のシナリオと個人投資家が取るべきスタンス
ASEAN地域でのデータセンター需要は、今後5年間は確実に伸びる。AI、クラウド、5Gといった技術トレンドがすべて追い風になっており、構造的な成長テーマだ。ただし、すべての企業が恩恵を受けるわけではない。
勝ち組と負け組の差は、電力調達の安定性、政府との関係、資金調達力で決まる。特に電力コストの上昇局面では、自前で発電設備を持つ企業が圧倒的に有利だ。通信キャリアも、既存の顧客基盤とネットワークを活かせる点で優位性がある。
一方で、純粋なデータセンター運営企業は、電力コストと資金調達コストの両方に苦しむ可能性がある。特に非上場企業が多く、情報開示も限定的なため、個人投資家が直接投資するのは難しい。
したがって、個人投資家としては、上場している電力系データセンター企業(Gulf Energy)か、通信系データセンター企業(AIS)に絞るのが現実的だ。ポートフォリオの5〜10%程度を配分し、2〜3年の中期で保有するスタンスが良いだろう。
短期的には、各国の政策発表や大型案件の受注ニュースで株価が動くため、ニュースフローには注意が必要だ。特にマレーシアとタイは政府がデータセンター誘致に積極的なので、定期的に政策動向をチェックしておきたい。
最後に、為替リスクだけは常に意識しておくこと。ASEAN通貨は対円でも対ドルでも変動が大きいため、投資タイミングと為替水準は慎重に見極める必要がある。
最終更新日:2026年4月17日 | 著者:なかの@投資大好き
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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