サムスン電子の半導体赤字はいつ回復?業績予想と投資判断を読み解く

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なかの@投資大好き

10年以上の投資経験を持つ個人投資家。日本株、米国株、韓国株、ETF、投資信託などを経験。普段はサラリーマン。

サムスン電子の半導体部門、2023年は14兆ウォンの営業赤字を記録

サムスン電子の半導体部門(DS部門)は、2023年通期で約14兆ウォン(約1.5兆円)という記録的な営業赤字を計上しました。これは同社の半導体事業史上、最大規模の赤字です。

赤字の主因はメモリ半導体の価格崩壊。DRAMとNAND型フラッシュメモリの両方で、需要の急減と在庫過多が重なり、2022年後半から価格が下落し続けました。スマートフォンやPC向けの需要が停滞したことに加え、データセンター向けも一時的に調達を絞ったため、メモリメーカー各社が苦境に立たされたのです。

サムスンは当初、減産に消極的でした。市場シェアを維持し、競合を振り落とす戦略を取ったためです。しかしこの判断が裏目に出て、赤字幅を拡大させる結果となりました。2023年4月になってようやく「意味ある減産」を発表。それでも在庫調整には時間がかかり、業績の底打ちは2023年第3四半期までずれ込んでいます。

ただし、2023年第4四半期には営業黒字への転換が見えてきており、投資家の関心は「いつ本格回復するのか」に移っています。

2024年以降の業績予想:AI需要とHBMが回復のカギを握る

2024年のサムスン半導体部門は、黒字化と利益率の段階的な回復が見込まれています。市場予想では、2024年通期の営業利益は5兆~8兆ウォン程度との見方が主流です。

回復の最大の要因は、AI向けメモリ需要の急拡大。特に生成AI向けに使われるHBM(High Bandwidth Memory)の需要が急増しており、サムスンもSKハイニックスに続いてHBM3とHBM3Eの量産を本格化させています。HBMは通常のDRAMに比べて利益率が高く、AI需要の拡大は業績回復の追い風になります。

データセンター向けのサーバーDRAMやSSDも、2024年は回復基調。クラウド各社が設備投資を再開しており、メモリの発注量も増加しています。マイクロソフト、アマゾン、グーグルといった大手が生成AI関連のインフラ投資を強化していることが背景です。

一方、スマホやPC向けのメモリは回復が緩やか。特に中国市場の消費低迷が続いており、民生向けメモリの価格上昇は限定的です。つまり、2024年の回復はAIとデータセンター主導であり、全方位的な価格回復ではない点に注意が必要です。

SKハイニックスとの競争激化が利益率を左右する

HBM市場では、SKハイニックスが先行しています。エヌビディアのAI向けGPUに採用されたHBM3Eで高シェアを確保しており、サムスンは出遅れました。サムスンのHBM製品も品質改善が進んでいるとされますが、エヌビディアへの本格供給は2024年後半以降との観測が強い。

この競争の結果次第で、サムスンの利益率回復のスピードは大きく変わります。HBMで巻き返せれば利益率は急回復しますが、SKに差をつけられたままなら、従来型DRAMの薄利多売構造から抜け出せません。

投資判断は「段階的な買い増し」が現実的

結論から言えば、サムスン電子への投資判断は「今すぐ全力買い」ではなく、「分散して段階的に買い増し」が妥当です。

理由は明確です。業績は回復基調にあるものの、そのペースと持続性には不確実性が残るためです。2024年第1四半期の決算(4月発表予定)で、HBM供給の進捗やメモリ価格の回復ペースが明らかになります。その結果を見てから追加投資を判断しても遅くはありません。

現在の株価水準(2024年4月時点)は、すでに業績回復をある程度織り込んでいます。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)で見ても、極端な割安感はありません。つまり、「大底で拾う」というタイミングではなく、「回復局面の初期に乗る」という位置づけです。

一方で、中長期的には魅力があるのも事実。AI需要は2025年以降も続く見込みであり、メモリ市場全体も回復サイクルに入っています。ファウンドリ事業(受託生産)も、2ナノ工程の量産開始により収益貢献が期待されます。3~5年の投資スパンで見れば、今から仕込んでおく価値は十分にあります。

韓国株特有のリスク:ウォン安、地政学、財閥リスク

サムスン電子への投資では、企業単体の業績だけでなく、韓国株特有のリスクも考慮する必要があります。

まず為替リスク。韓国ウォンは新興国通貨の中でも変動が大きく、ドル高局面では大きく売られる傾向があります。米国の金利が高止まりすれば、ウォン安が進行し、円建てやドル建てでのリターンが目減りする可能性があります。ただし、サムスンは輸出企業であるため、ウォン安は業績にはプラスに働く面もあります。この点は両面性があります。

次に地政学リスク。韓国は北朝鮮との軍事的緊張、米中対立の狭間での立ち位置、中国経済への依存度の高さなど、複数のリスク要因を抱えています。特に半導体は戦略物資であり、米中の対立が深まれば、サムスンの中国向けビジネスに規制がかかる可能性もあります。

さらに、財閥リスクも無視できません。サムスングループは李在鎔副会長を中心とする一族経営であり、経営判断や後継問題が株価に影響を与えることがあります。過去には贈収賄事件などで副会長が収監されたこともあり、ガバナンスの透明性には課題が残ります。

今が仕込み時か、それとも様子見か?最終判断

サムスン電子の半導体赤字は、2024年には確実に縮小し、黒字化が見込まれます。AI需要とHBMの立ち上がり、在庫調整の進展、メモリ価格の底打ちが重なり、業績は回復局面に入っています。

ただし、回復のスピードと持続性には不透明な部分が残ります。HBMでの競争力、中国経済の動向、米中対立の行方、為替リスクなど、複数の変数が絡み合っています。

したがって、投資判断としては「段階的な買い増し」を推奨します。まずは少額でポジションを持ち、四半期ごとの決算発表や市場動向を見ながら追加投資を検討する。これが個人投資家にとって最もリスクとリターンのバランスが取れた戦略です。

「全力買い」でもなく、「完全様子見」でもない。今のサムスン電子は、そんな微妙だけれど面白い位置にいます。

サムスン電子の技術開発動向について、さらに深く知りたい方には次の記事も参考になります。最先端プロセスの競争力が、今後の業績回復にどう影響するかが見えてきます。
サムスン電子 2ナノ工程 開発状況

最終更新日:2026年4月17日 | 著者:なかの@投資大好き

※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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