なかの@投資大好き
10年以上の投資経験を持つ個人投資家。日本株、米国株、韓国株、ETF、投資信託などを経験。普段はサラリーマン。
TSMCのCoWoS生産能力、2026年まで供給不足が続く見通し
台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)の先端パッケージング技術「CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)」の供給不足が、2026年まで続く可能性が高まっています。
CoWoSとは、複数のチップを基板上に高密度で実装する技術で、AIチップに不可欠な技術。NvidiaのH100やH200といったハイエンドGPU、AMDのMI300シリーズ、GoogleのTPUなど、生成AI時代を支える主要チップのほぼすべてがこの技術を使っています。
TSMCは2024年にCoWoSの生産能力を月産約3.3万枚(12インチウェーハ換算)まで拡大しましたが、2025年には月産4万枚超、2026年には月産5万枚規模へと段階的に引き上げる計画。それでも需要に追いつかないというのが現状です。
実際、NvidiaやAMDといった大手顧客は2026年分の生産枠を既に確保しようと動いており、新規参入組や中堅プレーヤーは割り当てを受けられない状況が続いています。これはつまり、AI半導体市場における「持てる者」と「持たざる者」の格差が、パッケージング工程で固定化されつつあるということ。
なぜCoWoSだけがこれほど逼迫しているのか?
理由は大きく分けて3つあります。
①技術的な参入障壁が極めて高い
CoWoSは単なる組み立て技術ではなく、微細な配線技術、熱管理、歩留まり向上のノウハウが必要。TSMCが10年以上かけて磨き上げてきた技術で、競合が短期間でキャッチアップするのは困難です。サムスン電子やインテルも先端パッケージング技術を持っていますが、量産実績と信頼性ではTSMCが圧倒的。
②設備投資に時間がかかる
CoWoS用の製造装置は特注品が多く、発注から納入まで1年以上かかるケースも。しかも一度ラインを立ち上げても、歩留まりを安定させるまでにさらに数ヶ月を要します。TSMCが増産を急いでも、物理的に時間がかかる構造なのです。
③AI需要の伸びが予想を超えている
生成AIブームは2023年から本格化しましたが、その後もChatGPTやClaude、Geminiといったサービスの普及が加速。企業向けAIインフラ需要も急拡大しており、2024年時点の需要予測はすでに上方修正が繰り返されています。つまり、供給が追いついた頃には、また需要が上振れているという状況が続いているわけです。
投資判断:TSMC株は「買い」なのか、それとも織り込み済みか?
結論から言えば、TSMC株は中長期での「買い」と判断します。ただし、短期的にはボラティリティに注意が必要です。
まず、CoWoSの供給不足が2026年まで続くということは、TSMCが「値決め力」を持ち続けるということ。実際、TSMCは2024年にCoWoS関連の価格を引き上げており、顧客側もそれを受け入れざるを得ない状況。この価格決定力は利益率の改善に直結します。
加えて、CoWoSを使えるのはTSMCだけという状況が続けば、NvidiaやAMDといった顧客企業もTSMCへの依存度を下げられない。つまり顧客の「ロックイン効果」が非常に強いわけです。
2024年第3四半期の決算では、TSMCの売上高は前年比36%増の759億台湾ドル(約3.5兆円)、純利益は同54%増。特に先端パッケージング部門の売上は前年比で倍増しており、全社業績を牽引しています。2025年通期でも売上高成長率は20%台後半が見込まれており、成長ストーリーは健在です。
ただし、株価は既にかなり上昇しており、PERは25倍前後と歴史的に見れば割高圏。短期的には利益確定売りや地政学リスクで調整する可能性もあるため、分散投資と時間分散を意識した買い方が賢明です。
台湾株特有のリスク:地政学と為替、そして政策変更
TSMC株に投資する上で避けて通れないのが、台湾特有のリスクです。
①台湾海峡リスク
中国と台湾の緊張関係は常に市場のテールリスクとして意識されています。米国はTSMCの工場をアリゾナに建設中ですが、これが本格稼働するのは2025年以降。それまではTSMCの生産の大半が台湾に集中しており、有事の際には半導体サプライチェーン全体が麻痺するリスクがあります。
②為替リスク
台湾ドルは比較的安定していますが、米中対立や米国の金利政策次第では急変動もあり得ます。TSMCの売上の大半は米ドル建てですが、日本の投資家が台湾株を買う場合、円→台湾ドル→米ドルという二重の為替リスクを抱えることになります。ADR(米国預託証券)経由での投資も選択肢の一つです。
③政策変更リスク
台湾政府はTSMCを「国の宝」として扱っていますが、逆に言えば政治的な思惑が企業戦略に影響を与える可能性もゼロではありません。また、米国が対中輸出規制を強化した場合、TSMCの一部顧客(中国系AI企業など)向けの売上が減少するリスクもあります。
結論:2026年までの供給不足は「TSMCの優位性」そのもの
CoWoSの供給不足は、一見するとTSMCの弱点に見えるかもしれません。しかし投資家目線で見れば、これは競争優位性の証明です。
誰も真似できない技術を持ち、需要が供給を上回り続け、価格決定力を維持できる。これ以上の「堀(moat)」はありません。2026年まで供給不足が続くということは、少なくともそれまでTSMCの業績と株価を支える構造的な追い風が続くということです。
もちろん、短期的な株価調整や地政学リスクには注意が必要。ですが、AI時代のインフラを支える企業として、TSMCの中長期的な成長ストーリーは依然として魅力的です。
個人投資家としては、一括での大量買いではなく、時間分散でコツコツ積み立てるスタイルが現実的。特に調整局面があれば、それは仕込みのチャンスと捉えてよいでしょう。
台湾株への投資経験がない方でも、証券会社によっては台湾株やADRを扱っているところもあります。まずは少額から、TSMC株という「AI時代の心臓部」に投資してみるのも一つの選択肢です。
最終更新日:2026年4月17日 | 著者:なかの@投資大好き
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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