なかの@投資大好き
10年以上の投資経験を持つ個人投資家。日本株、米国株、韓国株、ETF、投資信託などを経験。普段はサラリーマン。
この記事は、BYD株への投資を検討している個人投資家、特に中国株・新興国株の値動きに慣れていない初心者〜中級者向けに書いている。
結論:BYDは4月現在、短期的には様子見が妥当。ただし30〜40香港ドル台前半への調整局面があれば分割買いを検討する価値がある。欧州関税リスクは織り込み済みだが、中国国内の補助金縮小とASEAN展開の成否が今後6ヶ月の株価を左右する。
BYDの2026年1〜3月実績:販売台数は伸びたが利益率に黄信号
BYDが4月上旬に発表した第1四半期の販売台数は約92万台。前年同期比で28%増と、依然として高い成長を維持している。内訳を見ると純EVが約58万台、プラグインハイブリッド(PHEV)が約34万台だった。
ただし気になるのは利益率。昨年後半から続く価格競争の影響で、車両1台あたりの粗利は前年比で約12%減少したとみられる。特にSeagull(海鴎)やDolphin(海豚)といった10万元以下のエントリーモデルは、販売台数を稼ぐための「客寄せパンダ」的な位置づけになっており、収益貢献は限定的だ。
一方で高級ブランド「仰望」や「方程豹」は販売が伸び悩んでいる。中国国内の高級EV市場では、NIOやXpengといった競合に加え、テスラのModel Sも値下げで対抗しており、ブランド力の差がまだ大きい。
海外展開では、タイ・ブラジル・インドネシアでの現地生産が本格稼働し始めた。特にタイ工場は月産2万台体制に達しており、ASEAN域内での販売拡大に弾みがついている。ただし欧州では関税引き上げの影響で出荷ペースが鈍化しており、今後の戦略見直しが必要になるだろう。
株価推移と現在のバリュエーション:割安だが下値リスクも残る
BYD株(香港上場、1211.HK)の株価は、4月11日時点で約44香港ドル。年初から約8%下落している。昨年10月につけた高値60香港ドル台からは約27%の下落だ。
PERは約18倍、PBRは約3.2倍。中国EV銘柄の中では決して割高ではないが、利益成長率の鈍化を考えると「バーゲンセール」とまでは言えない水準。特に今期予想EPSが市場予想を下回る可能性があり、一段の下方修正リスクを抱えている。
| 指標 | BYD(1211.HK) | Xpeng(9868.HK) | Li Auto(2015.HK) |
|---|---|---|---|
| 株価(4月11日) | 44.2 HKD | 32.8 HKD | 78.5 HKD |
| PER(予想) | 18.3倍 | 赤字 | 21.7倍 |
| PBR | 3.2倍 | 2.1倍 | 4.5倍 |
| 2026年販売目標 | 420万台 | 45万台 | 110万台 |
| 海外比率(推定) | 22% | 8% | 5% |
テクニカル面では、200日移動平均線(約47香港ドル)を下回っており、短期的には下降トレンド継続の可能性がある。一方で、40香港ドル近辺には昨年来の強いサポートラインがあり、ここを割り込むかどうかが重要な分水嶺になる。
為替の影響も無視できない。香港ドルは米ドルペッグだが、BYDの売上の約78%は人民元建て。円安・人民元安が続けば、日本の投資家にとっては為替差損が発生するリスクがある。現在の人民元レートは1元=約20.8円で、年初から約3%の元安が進行している。
中国政府の補助金政策と競争環境:価格戦争は2026年も続く
中国政府は3月末に発表した新政策で、EV購入補助金の対象を「15万元以下の車両」に絞り込んだ。これまでは30万元以下なら幅広く対象だったが、財政負担を減らすため大幅に縮小された形だ。
この政策変更はBYDにとって痛し痒し。低価格帯のSeagullやDolphinは恩恵を受けるが、主力のHan(漢)やTang(唐)といった20〜30万元クラスは補助金対象外になる。一方で、NIOやXpengといった高価格帯専門の競合は直接的な打撃を受けるため、相対的には有利とも言える。
問題は、補助金縮小で全体のパイが縮む可能性があること。中国自動車工業協会の予測では、2026年のNEV(新エネルギー車)販売は前年比15%増の約1,400万台としているが、これは補助金継続を前提にした数字。実際には10%前後の伸びにとどまるリスクがある。
競合との価格戦争も激化している。Xpengは3月に主力モデルのP7iを約2万元値下げし、Li AutoもL6の廉価版を投入してきた。BYDも対抗して一部モデルで値下げキャンペーンを実施しているが、利益率への影響は避けられない。
さらに地方政府による「地元メーカー優遇」も顕在化している。上海市や広東省では、地元に工場を持つメーカーに追加補助金を出す動きがあり、BYDは全国に工場を展開しているため一定の恩恵を受けるものの、地域ごとの販売戦略の見直しを迫られている。
ASEAN展開と欧州関税問題:海外比率30%到達は2027年以降か
BYDは海外売上比率を2026年末までに30%に引き上げる目標を掲げているが、4月時点では約22%にとどまっている。最大の障害は欧州だ。
EUは昨年10月に中国製EVへの追加関税を最大38%に引き上げた。BYDは比較的低い17%の税率が適用されているが、それでも価格競争力は大きく損なわれた。ドイツやフランスでの販売は前年比で約40%減少しており、現地ディーラーとの関係も悪化している。
一方でASEANは明るい材料。タイではすでにシェア10%を超え、Toyota・Hondaに次ぐ第3位に浮上した。インドネシアとブラジルの工場も稼働を開始し、現地生産によるコスト削減効果が出始めている。
| 地域 | 2026年Q1販売台数 | 前年同期比 | 主な課題 |
|---|---|---|---|
| 中国本土 | 約72万台 | +24% | 補助金縮小、価格競争 |
| ASEAN | 約12万台 | +68% | 充電インフラ不足 |
| 欧州 | 約4.5万台 | -38% | 関税、ブランド力 |
| その他 | 約3.5万台 | +52% | 規制対応 |
問題は充電インフラ。タイやインドネシアではまだ充電ステーションが不足しており、BYD自身が投資して整備する必要がある。これが短期的には利益率を圧迫する要因になる。
中東市場も注目だ。サウジアラビアやUAEでは政府主導でEV普及が進んでおり、BYDは現地企業との合弁でディーラー網を拡大している。ただし中東向けは高級モデル中心のため、台数ベースでの貢献は限定的だ。
今後6ヶ月の投資判断と3つのリスクシナリオ
BYD株を今買うべきか。私の判断は「現時点では様子見、40香港ドル割れなら段階的に買い」だ。
理由は3つ。第一に、中国国内の補助金縮小と価格競争激化で、今期の利益予想が下方修正されるリスクが高い。第二に、欧州市場の回復には少なくとも1年以上かかる見込みで、海外比率30%目標の達成は2027年以降にずれ込む可能性が高い。第三に、テクニカル的にまだ下降トレンドが継続しており、「底打ち確認」のシグナルが出ていない。
ただしASEAN市場での快進撃は本物だ。タイ・インドネシア・マレーシアの3カ国合計で、2026年通期では50万台超の販売が見込める。これは中国市場での成長鈍化を一部相殺する効果がある。
具体的な投資戦略としては、40〜42香港ドルのレンジに下がったタイミングで1/3を買い、さらに38香港ドル近辺まで下がれば追加で1/3、という段階的な買い方が現実的だろう。一括で買うのはリスクが大きい。
リスクシナリオその1:中国政府の追加規制
中国政府がEV過剰生産を問題視し、新規工場建設の認可を一時停止する可能性がある。BYDは鄭州と合肥で新工場を建設中だが、これが遅延すれば生産計画に狂いが生じる。
リスクシナリオその2:バッテリー原材料の価格再高騰
リチウムとコバルトの価格は昨年後半から下落していたが、4月に入って反転の兆しがある。特にコンゴ民主共和国でのコバルト採掘規制強化が報じられており、原材料コストが再び上昇すれば利益率はさらに圧迫される。
リスクシナリオその3:米中対立の再燃
米国大統領選を控え、対中強硬姿勢が再び強まる可能性がある。BYDは米国市場には直接参入していないが、メキシコ経由での迂回輸出が問題視されれば、北米戦略の見直しを迫られる。また香港市場全体への資金流入が細れば、BYD株も巻き添えで売られるリスクがある。
まとめ:買うなら調整局面を待ち、リスク分散を忘れずに
BYDは依然として中国EV業界のトップランナーであり、長期的な成長ポテンシャルは健在だ。ただし短期的には、補助金縮小・価格競争・欧州関税という三重苦に直面しており、株価の下値余地はまだ残っている。
今すぐ飛びつくのではなく、40香港ドル前後への調整を待つのが賢明だろう。その際も全資金を一度に投入せず、2〜3回に分けて買い下がる戦略が望ましい。
また中国株特有のリスクとして、政策の突然の変更や規制強化がある点を忘れてはいけない。ポートフォリオ全体の10〜15%程度に抑え、他の地域・セクターとバランスを取ることが重要だ。
ASEAN展開の進捗と、第2四半期の利益率改善が確認できれば、投資判断を「買い」に引き上げる余地はある。少なくとも今後2ヶ月の決算発表と販売データは注意深く見ていきたい。
BYD株への投資を本格的に検討するなら、年間を通じた株価予想と地政学リスクの詳細分析も参考にしてほしい。BYD株価2026年予想の記事では、複数のシナリオ分析と四半期ごとの投資戦略を詳しく解説している。
最終更新日:2026年4月17日 | 著者:なかの@投資大好き
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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